フラックスアナライザーを用いた細胞のエネルギー代謝試験

試験概要

弊社では細胞外フラックスアナライザー XFe96 (Agilent Technologies社製) を導入しています。こちらの機器を用いて細胞のエネルギー代謝状態をリアルタイムに評価することが可能です。

1. ミトコンドリア呼吸評価

XFストレスキットを用いて、ミトコンドリア機能の主要な指標である基礎呼吸・ATP産生・プロトンリーク・最大呼吸 (予備呼吸能) を計測します。

2. 解糖評価

XF Glycolytic Rateキットを用いて、解糖由来のプロトン流出速度から解糖活性を測定することができます。基礎解糖能、予備解糖能を計測可能です。

3. ATP産生評価

XFリアルタイムATP Rateキットを用いて、細胞のATP産生速度に加え、ATP産生のうち、ミトコンドリア呼吸によるものと、解糖系によるものがどれぐらいを占めているのかを測定することができます。mitoATP産生速度、glycoATP産生速度、total ATP産生速度を計測可能です。

4. 主要な呼吸基質の利用率評価

XF Mito Fuel Flexキットを用いて、主要な呼吸基質であるグルコース、脂肪酸、グルタミンの各々の利用率を解析する事ができます。
主に3つの指標を計測可能です。
Fuel Dependency (基底状態における特定基質の利用率)
Fuel Flexibility (CapacityとDpendencyの差分)
Fuel Capacity (エネルギー需要に対して特定の基質を利用する割合)

語句の説明

1. ATPとは?
アデノシン三リン酸のこと。生体のエネルギーの放出・貯蔵あるいは物質の代謝・合成に重要な役割を果たしている。
      
2. ミトコンドリア呼吸とは?
TCAサイクルで作られたNADH2+等の電子を、ミトコンドリア内膜上の酸素間で伝達し(電子伝達系)し、ATPを大量に産生する。この過程で酸素が消費される。       

3. 解糖とは?
細胞内に取り込まれたグルコースを細胞質でピルビン酸に分解する過程で、ATPを産生。その後、細胞外に乳酸を排出する経路。この経路では、細胞外に排出される乳酸に由来する水素イオンによって、細胞外のpHが酸性に傾く。

解糖系

使用機器

XFe96 (Agilent Technologies)

細胞外フラックスアナライザーの特徴

■生きた細胞の代謝をリアルタイムに計測
■ミトコンドリア呼吸 (OXPHOS) と解糖を同時に評価
■化合物を利用した機能的な代謝の評価
■ハイスループット

代表的な試験例

・がん研究
 がん細胞に特徴的な代謝変化の評価 など
 
・免疫研究
 炎症性マクロファージか抗炎症性マクロファージかの評価
 T細胞活性化の評価 など
 
・肥満研究
 褐色脂肪細胞、べージュ脂肪細胞の分化・機能評価
 細胞が利用しているエネルギー基質の評価 など
 
・ミトコンドリア機能評価

 ミトコンドリア基礎呼吸や最大呼吸の測定によるミトコンドリア機能の評価 など

参考文献

●ビタミンCの選択的がん治療効果
Vitamin C selectively kills KRAS and BRAF mutant colorectal cancer cells by targeting GAPDH
Yun et al., Science. 2015

●CAR-Tのがん治療
Targeting REGNASE-1 programs long-lived effector T cells for cancer therapy
Wei et al., Nature. 2019

●iPSCの生存・分化と基質依存(選択)性
Glutamine Oxidation is indespensable for Survival of Human Pluripotent Stem Cells
Tohyama et al., Cell Metabolism. 2016



※博士号保持者が中心となって試験を担当します。